ピアノのオーバーホールとは、ピアノを工房に預けて分解し、弦、ハンマー、フェルトなどの部品を新しいものに交換して、
再度組み立てることです。ピアノの大がかりな修理とも言えます。
オーバーホールすることで、老朽化したピアノも本来の性能や音色を取り戻すことが可能になります。
グランドピアノの
オーバーホール作業工程
作業日程、作業工程に沿って説明します。
今回の対象はG3A、1987年製造。
1日目 弦・チューニングピン交換 vol.1
弦外し/チューニングピン外し/ピンブッシュ外し/響板清掃/ベアリング研磨/ピンブロック打ち込み/チューニングピン打ち込み
製造番号確認
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品番と製造番号を確認する。
作業前の状態
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屋根を外します。
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だいぶ埃が積もっています。
チューニングピンとピンブッシュを外す
弦を外す前にリボンがどのように付いているか記録しておく。
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弦を外す時は全体的に満遍なく緩めてゆく。
局所的に緩めるとフレームが割れてしまう場合もある。 -
ピンブッシュを外す時は注意をしないとフレームを傷つけます。
響板清掃
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清掃前。
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気持ち良い位綺麗になります。
ベアリング研磨
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弦跡が付いてます。
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弦跡がなくなりました。
ピンブッシュ打ち込み
ピンブッシュをポンチで打ち込む。高さが微妙に違うのでセクション毎に確認する。
ドリルで穴開け。今回は6.9mmを使用。
チューニングピンは角度がついているので、留意しながら穴を開ける。
またピン板まで貫通しないように注意する。
チューニングピン打ち込み
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今回のチューニングピンの径は7.1mmを使用。 ベースセクションは予め、ある程度の深さまで打ち込んでしまう。
チューニングピンを打ち込むときは棚板とピン板の間にジャッキをあてがう。
2日目弦・チューニングピン交換 vol.2
張弦
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弦を規定の長さで切り半分に折る。弦の端をピンの穴に入れてT字ハンマーを使って1回転半まわして巻口を作ってからピンを差し込む。
ある程度ピンを打ち込んだ後、巻口の角度が均等になるように調整してから、さらにねじ切りが2mm程度みえるくらい打ち込む。
打ち込み過ぎないように。巻口のコイルが密着するように引き上げる。
3日目弦・チューニングピン交換 vol.3
張弦続き
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芯線を張り終えたら巻き線を張る。
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張弦完了。
4日目フェルト及びクロスの交換 vol.1
ダンパーフェルト交換/鍵盤ブッシングクロス交換
ダンパーフェルト交換
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フェルトを除去する前に各セクションでのフェルトの長さを記録しておく。
フェルトをむしれるだけむしる。残ったフェルトをヤスリやカッター等で除去する。 -
ダンパーライニングフェルトの貼り付け。
今回は10本をひと纏まりにして接着剤を着けて貼り付ける。
接着剤が固まったのを確認してカッターで切り離す。押し切る感じで。
良く切れる刃を使わないと大変です。 -
平ダンパーをカットする。
治具(自作)をしっかり押し当てて一気に押し切る。
ここでも良く切れる刃を使うこと。 -
ダンパーフェルトを接着する。
鍵盤ブッシングクロス交換
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バランス・フロント共に蒸気を当ててからこそげ取る。
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今回はホットメルトを使用。規定の長さに切断して、熱したコテをあてて接着する。
コテは熱くなり過ぎないように濡れ雑巾を使って温度を調節しながら使う。
5日目フェルト及びクロスの交換 vol.2
バックチェック交換/ダンパーレバークッションフェルト交換/サポートヒールクロス交換/レギュレチングボタンパンチング交換/ハンマーストップフェルト交換/鍵盤蓋バネ受けスキン張替え/バックチェック交換
バックチェック交換
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バックチェックはヘッドで交換。
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外すとき、付ける時はワイヤーが意外にもろいので、ねじ切らないように注意する。
左が旧、中央から右が新。
ダンパーレバークッションフェルト交換
サポートヒールクロス交換
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サポートヒールクロス1台分は長さがギリギリなので、1個1個をシビアに切っておかないと足りなくなります。
レギュレチングボタンパンチング交換
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交換前。各セクションをハンマーレールから取り外す。
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古いパンチングを除去。
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交換後。
シャンクストップフェルト交換
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既存のフェルトをとった後、やすりやカッターで取り除く。
鍵盤蓋バネ受けスキン交換
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交換前。
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交換後。
6日目 ハンマー交換
ハンマー交換/整音/ファイリング
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交換前の低音の弦の跡。弦跡が長くなると高次倍音が強くなり耳障りな音になる。また弦も切れやすくなります。
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交換前の中音の弦の跡。
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交換直後、耳(端)が立っているのが分かると思います。
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針刺し、ファイリング完了後。